こんにちは。塾長です。
自動車の個性が最も表れるのが「ボディカラー」ですよね。
人気のボディカラーは白、黒、シルバーの3色は定番中の定番として不動の地位を確立しているようにも思えます。
その人気色の中でも、際立っているのが「パールホワイト」ではないでしょうか。
では、なぜにそれ程人気なのでしょうか。
今回は、私塾長の「元ディーラー系塗装士」としての視点も含めて解説していきます。
パールホワイトの効果(メリット)
まず、パール塗装がもたらす「効果」について解説していきます。
塗装本来の役割は「防サビ」「断熱」「美観」ですが、この塗装はそれだけではないんです。
見た目の高級感
近くで見ると、本物の真珠をちりばめたかのように上品で、キレイな色合いのパールホワイト。
これは普通の白、黒、シルバーよりも頭一つ抜きんでており、まさに宝石の名が付くに相応しい高級感溢れるカラーリングと言えるのではないでしょうか。
高い耐久性
従来の塗装は2コートで構成されているのに対し、パールホワイトは3コート塗装で、1工程多い塗装なんです。
そのため、傷に対する耐性は同等ですが、サビや腐食の耐性は当然2コート塗装よりもタフネスになります。
リセールに有利
ちょっと下世話な話になるかもしれませんが、売却する時に「プラス査定」が付くのも見逃せないポイントでしょう。
ディーラーの下取りではあまり効果は無いようですが、買取業者で査定すると必ずと言って良い位プラス査定が付きます。
それだけ需要がある、つまり「人気があるから売れ易い」ということになります。
塗装だけでセールスポイントの一つになるのですから、その効果は侮れないでしょう。
パールホワイトが「お高い」理由
自動車メーカー各社「特別塗装色」としてパールホワイトの設定をしていますが、標準の塗装よりもオプション的な立ち位置になるため、割高になります。
では、人気だから高くなったんでしょうか? 答えはNO
ちゃんとした理由があるんです。詳しく解説していきましょう。
「3コート塗装」が他の塗装と一線を画す
車のボディは鉄板です。
自動車が造られる最初の段階は、車のボディとして形作られた後、最初の下地として「自衛隊車両のような色」にコーティングされます。
極薄の塗膜なので、プールにくぐらせる形で工程が自動化しています。
そこからエアーで塵、ホコリを取り除き、人の手による塗装が始まります。
まず、その色に対する下地色を全体に塗装します。大体白、黒、グレーの3種類です。
白は白、黒は黒、メタリックがグレーと言った感じで塗装されます。
ここまではパールホワイトでも共通ですが、標準塗装の場合、焼き付き乾燥してから上塗りの塗装をしていき、メタリックは最後にクリア塗装で仕上げます。
これに対し、パールホワイトはここから先が少し違ってきます。
下塗りの白を焼き付き乾燥させた後、「カラーベース」という塗料を塗ります。
これは上塗りではありませんが、大事な塗膜です。
次に「パール塗料」を塗ります。事実上これが上塗りです。
最後にクリア塗装して仕上げるのが、一連の流れになります。
塗装の仕組み
先にも触れましたが、車の形に形成されたボディーは、最初の下地で自衛隊車両のような色を付け、ホコリや塵を飛ばし、人の手で塗装がされていきます。
始めは、「中塗り」と言われる下地塗装をしていきます(メーカーによって呼称の違い有り)。
基本的に3色で「白は白」「黒は黒」「メタリックはグレー」と言った感じで、上塗りの色によって下地の色が決まっています。
また、塗料にも大きく2種類があります。
ソリッド塗料
メタリック加工されていない、ナチュラルな色合いの塗料です。
色の定着が安定し易く、リペア補修も難易度的には低く、言ってしまえば「調色さえ良ければ誤魔化しが効く」塗料です。
素朴で味わいのある色合いが特徴ですが、車種や調合(オリジナル調色)によっては「安っぽく」見えてしまうのが難点です。
下地塗装の中塗りも、このソリッド塗料です。
メタリック塗料
ソリッド塗料に微細なアルミ粉を混ぜたもので、金属のような光沢が特徴です。
アルミ粉が光輝材として光を反射、透過、屈折させることでキラキラした光沢がもたらされます。
が、メタリック塗装だけでは表面がザラザラするため、クリア塗装で仕上げをしてツヤツヤにします。
ソリッドとは違い、「部分塗装」の難易度が高く、板金塗装する場合は少しの傷の補修でも広範囲を塗装しないと元々の塗装面と補修塗装の色合いが合わなくなります。
つまり、補修した所がモロバレになるわけです。
パールホワイトの仕組み
パールホワイトの場合もメタリックと構図は同じですが、仕組みが複雑になっています。
まず、パールホワイトの下地「カラーベース」。
この塗料で色合いが決まると言ってもいい位に肝な塗料です。
このカラーベースの上にクリア塗料に雲母という鉱物を微細な粉にして混ぜたパール塗料を塗布し、クリア塗装で仕上げたものがパールホワイトマイカです。
下地のカラーベースを半透明のパール塗料で透かすことで、まるで粉にした真珠を混ぜて塗装したかのような高級感たっぷりの仕上がりになります。
因みに、「マイカ(mica)」は英語で「雲母」。~マイカ、という色名は光輝材に雲母が使われている、ということになります。
パールホワイトのデメリット
ここまで良いことずくめな感じで来てしまいましたが、デメリットはあるのでしょうか。
最後に気を付けるべきデメリットを挙げていこうと思います。
シンプルに高い
前述したように、パールホワイトは「特別塗装色」としてオプション扱いにしているため、別料金となる事でも「高額塗装」であることが伺えます。
車名 | カラーネーム | 価格(税込) |
アルファード/ヴォクシー | ホワイトパールクリスタルシャイン | 33,000円 |
エルグランド | ブリリアントホワイトパール3P | 55,000円 |
オデッセイ | プラチナホワイトパール | 44,000円 |
クラウン | ホワイトパールクリスタルシャイン | 38,500円 |
ワゴンR | ピュアホワイトパール | 22,000円 |
ウェイク | パールホワイトⅢ | 27,500円 |
1工程多い塗装と言うだけでも、これだけの価格差があるのは驚きですが、その効果や価値を鑑みれば頷けなくもないですね。
板金塗装がかなり割高になる
オプション品としての価格からすれば、塗料自体が高価であることもありますが、塗装の仕組みにおいても高額になる要素があります。
それは傷などを修復する板金塗装においても多大な影響を受ける、ということです。
パールホワイトはメタリック塗装と同じ構図なので、ソリッド塗装のように「傷ができた周辺を削っただけで全体をならす」事はできず、かなり広範囲を削らなければなりません。
しかも、カラーベースを半透明のパール塗料で透かすことで美観を際立たせている仕組みなので、カラーベースの調色が元の純正色に合わなければ補修ヶ所がモロバレになります。
とはいえ、カラーベースの調色を機械で大量に調色している純正のカラーベースと同じにするのは至難の業なんです。
なので、メタリック塗装よりも広範囲を削る「超ぼかし塗装補修」が一般的です。
具体的には、ドアの一部を補修するとした場合、ドア丸ごと+ドアに隣接する箇所も大部分削るという「この傷でここまでなる!?」と、ビックリする位の広範囲を塗装しないと、全体的に色合いが合わない程技術を要求されるシロモノなんです。
さらに、パール塗料は柔らかく、少し塗り過ぎるだけでタレてしまうため、塗装士の腕の見せ所になります。
キズに神経質になる
普通の塗装よりもキラキラして高級感があるパールホワイトは、その景観から「キズ」に対して敏感になるのはユーザーの気持ち的に必然と言えるでしょう。
車の塗装は新品のタオルで拭くだけでも拭き傷がつくほど「キズに弱い」特性を持っています。
1工程多い塗装とはいえパールホワイトも例外ではなく、くすみがかり易く洗車時期が早いというオマケまでついてきます。(洗車が好きな人には持って来いかも)
こちらの記事↓で洗車について解説しています。併せてどうぞ。
特に開け閉めするドアノブ周りは頻繁に人の手が触るため、最も傷が付き易い箇所です。
触る頻度が多いため傷も深くなり、傷に汚れが入り込むと、ドアノブの構造上なかなか汚れが取れない事態に陥ります。
車の宿命とも言える傷の対策に、ドアノブに貼り付ける透明シートも市販されています。
景観を損なうことなく傷を防げるので、おすすめのアイテムです。
まとめ
車の高級感を演出する塗装、パールホワイトについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
標準の塗装よりも高級感があり、1工程多い塗装なので耐久性も高く、特殊な構成のため高価でリペア補修も高額になることがご理解いただけたかと思います。
今後の車選びの参考になれたら、うれしいです。
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