ディーラーが勧める「残クレ」のウラ事情!普通は明かされることのないデメリットと本当のメリット

自動車

こんにちは、塾長です。

みなさんは新車購入の際、ディーラーの担当スタッフから「残クレ」を勧められたことはありませんか?

今までにない画期的な支払方法として、ディーラー各社からかなりの熱が入った「推し」を受けた人も多いのではないでしょうか。

今回はそんな「残クレ」について深掘りしていこうと思います。

「残クレ」とは?

残クレとは「残価設定クレジット」の略で、対象商品(ここでは車)の買取価格を差し引いた額をローンとして組む、新しいタイプの支払い方法です。

「残価設定型ローン」とも言いますね。

残クレの基本的な構図

例えば、あなたが買うつもりの新車が400万円とします。

残価として200万円を設定した場合、ローンは残価を差し引いた200万円で組めるため、事実上「新車が半額のローンで乗れる」ということになり、200万円のローンが完済した後の支払い方法は

  1. 残価をローンで組み直す
  2. 残価を一括で支払い
  3. 車を返却(買取り)

以上の3つの選択肢があり、この流れは大体どのディーラーでも共通し、月々の支払い負担が軽くなるのが最大のメリットとされています。

残クレのデメリット

早速ですが、デメリットとして見逃せない注意点を挙げていきます。

半額のローン、でも手数料は・・・?

上記の例で言うと、組んだローンは200万円ですが、「金利手数料は全体の400万円にかかっている」という裏事実。つまり、400万円の金利手数料で200万円を「とりあえず払っている」状態になっている、という事です。

車検証の名義は・・・?

車検証には「所有者」と「使用者」の欄があり、両方に本人の名前があれば「本人所有」ということになり、車両価格が完済済みであるか、返済中でも社会的信用度の高い人物であることが伺えます。

年齢が若かったり、初めてのローンだったり、社会的信用度が低いと「所有者」にローン会社の名前があったりします。

これは何を意味しているのかというと、「その車を担保にされている」ことになり、ローン完済までその車を売ることはできない、という状態です。

残クレは残価を完済、つまり新車価格全額を支払うまで「所有者」はディーラーになります。つまり、完済まで自分のモノではないんです。

やたらシビアな「条件」

ディーラーにとっては、利益が先延ばしになる支払い方法なので、「条件」が付いてくるのが世の常でしょう。代表的なものとしては

  1. 残価設定年数による走行距離の縛り(設定より超過で残価の減点)
  2. 残クレ開始時につけたオプション以外の車外パーツの取り付け禁止
  3. 2以外のカスタム禁止(性能が向上するものであってもNG)
  4. 事故、臭い、キズは特に厳しく見られる(残価の減点対象)

上記の条件は、どのディーラーでもまず付いています。

残クレの正体、ディーラーの思惑

こまで読み進めて頂いた方の中で、カンの良い方はお気づきでしょうか。この「残クレ」が決してお客様にとって買いやすい支払い方法などではない」事を。

「???」と、思った方もご安心ください。整理して解説しましょう。

残価の設定をする、ということは・・・?

お客様に残価を設定させることで、「売却時の行先をディーラー1択にさせる」ことができます。

なぜか。それは、「完済までその車がディーラーのモノだから」です。

車検証にある所有者がディーラーなら、ディーラーが売却することは可能です。極端な話、ディーラーが買取業者に出したり、オークションに出品してもOKなんです。

ともすれば、一番利益の出る自社ディーラーで引き取るのは道理ですよね。この時点ではまだ使用者であるお客様はそれができないんですから。

異様に厳しい条件のワケ

次に、やたらと厳しい「条件」。これにもワケがあるんです。

そもそも「残クレ」は、支払い方法の一つでしかないもののはずです。全額ローンを組めばそこまでの縛りはありません。

残クレを組んで、残価をどうするかの選択をするところまで来た方はわかると思いますが、「走行距離」「キズ」「へこみ」「変色」「臭い」「事故歴」「カスタム品の有無」と、かなり厳しくチェックされます。

これは、「良質の中古車を極限まで安く買いたたく」ためで、相当の「アラ探し」が実行されています。

まず、走行距離を設定することで良質車の基礎を確定させ、残価の選択になった時は「査定」と称して事細かなアラ探しによって価値が減額されていき、設定した額と査定額の差額を支払って返却するか、改めてローンを組むか、残価を一括で支払うかの選択を迫られます。

最初に設定した残価にもカラクリが!

「新車の状態から買い取り価格を差し引いた額をローンとして組む」

この一文の違和感、皆さんは気付きますでしょうか? ぶっちゃけてしまうと、これは言葉のマジックなんです。

ここで言う買取価格というのは、「未来の話」なんです。残価とはいえ新車価格、小さい額のローンではない事が多いでしょう。なのに未来の価値をどうやってディーラーは見い出しているのか。

実は、それぞれのタイプ別に中古市場価格のリサーチをしており、設定された残価の市場よりも割高な値をとっているんです。

例えば、お客様がミニバンを所望であれば、設定された残価に対して、残価を支払う時になるであろう状態の同格ミニバンの市場平均を割り出し、走行距離は○万キロ以内、状態は○ランク以上、などと数ランク上の条件を設定しています。

未来の価格を決めるわけですから、だいぶ多めのアドバンテージをとっているようですね。

隠されたディーラーの思惑

以上をかんがみれば、ディーラーの思惑が浮き彫りになってきます。

  1. まず、厳しい条件を付けることで状態の良い車の確保を可能にする。
  2. 残価の選択の時に厳しい査定で価値を下げる。判断基準となるリストは、「社内規定」や「社外秘事項」などと言って決してお客様に見せない。
  3. 残価をローンで組む場合も、金利を変えて利益を出すことも。
  4. 最初に設定した残価と査定額の差額を支払って返却されれば、超良質車が確保され「中古車販売」でも利益を出せる。
  5. 残価を一括で支払われれば、舌打ち。

と、まぁ最後は個人的主観ですが(笑)

ディーラーは、販売はもちろん、買取り(下取り)でも利益になるんです。

これを業界では「ノコギリで利益を出す」なんて言ったりするそうです。押して利益、引いても利益、てな感じでしょうか。

因みに、ディーラーの理想としては

  1. 残クレで販売
  2. 残価のローン、若しくは多く減点しての返却
  3. 良質車として中古車販売

で最高3重の利益が期待できることから、お客様にとって耳障りの良いうたい文句と魅力的な割引プラン、プレゼントキャンペーン等々を駆使して消費者心理の揺さぶりに熱が入るわけですね。

残クレに向いている人

では、この「残クレ」。ディーラーが儲かるだけの詐欺的システムなのか、と言えばそうでもありません。

頭の良い人が考え出したシステムと言えますが、お客様にも頭の良い人はいます。そう、残クレをうまく利用できる人がいるんです。

  1. 車いじりをしない
  2. 車を所有する事にこだわらない
  3. ディーラーの提示する条件を満たす自信がある(若しくはその環境にある)
  4. 残価設定を複数のパターンで見積もりをとり、自分のライフスタイルに合った残価を導き出せる
  5. 残価選択の際には「返却」する
  6. また違う車か、気に入っていれば同じ車をチョイスする

以上の事をする人は残クレを理解して、巧く利用できる人と言えるでしょう。

残クレ最大のメリットは、「月々の支払額が安い」ことです。そのために「犠牲を払う」事が出来る人が、残クレを巧く利用する条件なのではないでしょうか。

まとめ

自動車メーカーという看板を背負っているディーラーが、こんな詐欺まがいな販売方法をとっているなんて、結構なインパクトだったのではないでしょうか。

まとめていくと、こんな感じです。

  1. 残クレとは、最初に買取価格として残価を設定して、残価を差し引いた額をローンで支払うシステムで、月々の支払いが安くなるのが最大のメリット
  2. デメリット①残価を差し引いた額をローンしても、金利手数料は全額分にかかっている
  3. デメリット②車検証の所有者名義がディーラーで、完済まで借り物状態になる
  4. デメリット③厳しい条件があり、残価選択の時に減点になり易い
  5. デメリット④最初に設定した残価は、だいぶ高めの設定がされている
  6. 最大3重の利益を出すことをディーラーは目論んでいる
  7. デメリットが多い残クレでも、巧く利用できる人がいる

どちらかといえば、企業向けに造られた「リース」に近い販売方法で、所有権が税金に影響する企業こそ成立するのに、仕組みを変えて個人向けにやってるというから、「そこまでしたいのか」とツッコミたくなりますね。

ディーラー営業マンは、残クレを勧める時は「今、契約を」と迫ってくるはずです。なぜか。

契約前に下調べされるとマズいからです。

「何も知らないお客様が何も知らないまま契約される」ことがディーラーにとって理想なんです。仮に残価選択までに残クレの全貌を知ったとしても、2重の利益は確保したことになります。

「オイシイ話にはウラがある」とはよく言ったもので、耳障りの良い文言が並び、まるでVIP待遇かのような優遇された説明がされる時こそ、俯瞰ふかんしてとらえ、即決せずに十分な下調べの後で改めてのぞむくらいが丁度いいのではないでしょうか。

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